特集

THE TOP RANKER ~狙われる者と狙う者~

絶対王者の新たな挑戦が始まる

11 × チャンピオン。53.27 ノット(98.65 km/h)のウインドサーフィン・スピード世界記録を保持するスピード・キング。
絶対王者に死角はないか? ある、かもしれない。アントワンは今季開幕直前に新たなボード(JP)に乗り換えた。それはたとえば、F1 レースに参戦している『マクラーレン+ホンダ』チームが、マクラーレンと決別し、ホンダのエンジンだけを別のシャーシ(車体)に積み替えて、世界と戦うようなものである。空力特性もシートのセッテングもまるで違う。ドライバーとマシンの相性だって、初めからしっくりくるとは限らない。
王者は万全ではない。だが彼はただの王者でもない。新たな挑戦が始まる。

驚異のレディス「男乗りの女」

 3 × PWAスラローム・クイーン。
 ある日本のトップ男子プロは言った。
「日本ならメンズの表彰台に立てるかもしれない。その可能性がきわめて高い」
 そういう女子が世界にはいる。去年のレースでは3戦全勝。文句無し。無敵だ。
 あなたにウィークポイントはあるのですか? そう尋ねると彼女は言った。
「それは言えない。PWAのウィメンズクラスのレベルは年々向上している。そういう変化の中では、多くの選手に勝利するチャンスが生まれるものだから」
 本当にそうだろうか? 今の彼女が自分の弱点を自覚しているとするならば、彼女を超えるレディスは、ますます出て来ようがないような気がするのだが。

日本の絶対王者は
サプライズを起こせるか?

 日本一速い男。84km/h の日本記録を保持するスピードキング。ファンは当然浅野に期待している。だが浅野はワールドカップにフル参戦しているわけではない。そこはその願いがすんなり届くような世界ではない。
 ではチャンスはないのか? ある。
 かつてF1 レーサーとして活躍した中嶋悟は「雨の中嶋」と言われた。雨が降れば普段とは違う状況が生まれて、すべての選手にほぼ均等にリスクが分配される。中嶋はそこで走った。浅野はどうか。
「南西のドン吹き(強風)になればチャンスはある。そうなれば、アントワンにだってミスを犯す可能性が生まれるから」
 浅野は走る。走れ。風よ吹け。

スタート直後に加速して世界と戦う

 穴見知典は去年PWAの正式種目に採用されたフォイル競技において『初代ユース(U-21)チャンピオン』になった。
 年齢制限のない総合クラスでは、ランキング内64人中の26位。悪くない。けれど穴見はずっと苦戦していた。世界のトップ選手のそれと比べると、明らかに性能に劣る道具でレースをしていたからだ。
 「でも今期はみんなと同じ道具で戦える」
 それでどこまでいけるか。
 穴見は今、スタート直後にセイルを扇ぎながら急加速するという走りに手応えを感じている。そのときに前に出られれば、あるところまでは耐えられる。
 22歳の「あるところ」が、僕らの想像を超えることを期待したい。

「男乗りの女」日本版

 2018 年、日本のスラローム女王になった須長由季は、今(4月9日現在)オリンピッククラスの世界大会に出場している。それは2020年、東京五輪日本代表の選手選考に重要な意味を持つ試合のひとつだ。
『オリンピック』と『スラローム』彼女は二足の草鞋を履いて二兎を追っている。
 身長171cm。足も長ければリーチも長い。須長はそのぶん懐の大きな「男らしい」フォームで乗ることができる。
 彼女は日本人離れした大器なのだ。事実ワールドカップでも何度か入賞を果たしている。
 日本で最も世界に近いのは須長かもしれない。ウィメンズクラスに「男がいる」と思ったら、それはきっとデルフィンか須長だ。彼女なら表彰台も狙える。